廃業のイメージ画像

本日は廃業に関して確認をしていきます。

3月6日の日経新聞の記事に中小企業の廃業が止まらないという記事が出ていました。

内容を要約すると、廃業件数は過去20年間で3倍近くに膨らみ、事業承継の切り札と期待されているM&A(合併・買収)は廃業数の1%にとどまるとのこと。

東京商工リサーチによると、22年の休廃業・解散件数は前年比12%増の4万9625件、02年(1万8031件)の2.8倍になっており、このうち損益が黒字のまま廃業した企業は約55%を占めているとのこと。また、資産が負債を上回る資産超過の企業は全体の63.4%だったそうです。社長の平均年齢は、02年の61.5歳から22年は71.6歳にまで上昇しているということでした。

本日は、廃業を選択する理由と注意点について確認していきます。

後継者がいないからという廃業の理由

後継者がいないというイメージ画像

中小企業白書によると、中小企業の廃業の理由としては、「経営者の高齢化、健康問題」「事業の将来性に不安があるから」「主要取引先との取引が終了したから」「経営者の家族に問題があるから」「事業のさらなる経営悪化を回避させるため」「後継者がいないから」などが挙げられています。

経営状態が悪化しており事業の再建が厳しい状況での廃業はやむを得ませんが、資産が負債を上回っている資産超過の企業で損益が黒字の状態で廃業が選択されるのは非常にもったいない話です。業績や将来性以外の理由である「後継者がいないから」の理由に加え、「経営者の高齢化・健康問題」も、後継者がいれば事業承継している可能性が高いことを考えれば、後継者が見つからないという要因は非常に多いのではないかと考えます。

後継者が見つからない理由を改めて、事業承継のタイプ別に分けて見ていきましょう。

親族内承継

事業承継として以前は一番多かった親族内承継ですが、現在は対象となる後継者がいたとしても、事業承継の意志がなかったり(リスクを取らない)、意志があったとしても十分な能力がないので選べない(経営環境がそれだけ厳しい)、現経営者自身が自分と同じ苦労をさせたくない(親心)ので選択しない、といった理由で親族内承継を諦めざるを得ない場合が多いようです。

親族外承継

親族内に後継者がいない場合、会社の経営幹部や従業員に事業承継するケースが考えられます。
会社を経営するには経営能力が必要でありその能力がない、後継者候補自身が経営を承継する意思を固める=覚悟を決めることができない、経営者保証などの問題があり理解を得られない、株式の承継における資金調達ができない・したくないなど、さまざまな問題があり、選択したくても選択できないのが現状です。そもそも親族内承継と違い長期的にみて計画的に行うことが難しいうえ、経営者に後継者を選択して育成する精神的な余裕と時間、ノウハウがないケースが多く、気がついたら廃業を選ばざるを得ないということになるようです。

第三者承継(M&A)

これについては、対外的に抵抗感があり踏み切れない、M&Aのことがよく分からない、相談する人がいない、規模的に仲介料がかかり払えない、などの理由でM&Aを選択肢に選ばないことが多いようです。結果的に廃業を選ばざるを得なくなります。

これらのことは、事が事だけに、確かに気軽に相談できる内容ではありません。最も多い相談相手が顧問税理士や公認会計士で、次に親族・友人知人、3番目に金融機関となるようです。この理由は日ごろから接触が多く結果的に相談しやすい相手なのでしょうが、M&Aや事業承継に関する専門的な知識はあまり持ち合わせているとは言えません。結果的にM&Aを検討するケースが少なくなるのではないでしょうか。

一方、廃業に関する相談については、相談しても解決するとは思えなかった、相談しなくても何とかできると思った、ということで、こちらも専門的な知識を持った専門家への相談はせず、自分で判断して廃業という結論にたどりついている現状があるようです。

廃業をする場合のメリット

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廃業を選択するメリットとは何でしょうか?

会社の経営状況にもよりますが、一番は関係者への影響を最小限に抑えられる点が挙げられるます。倒産となると債務を返済できない状態で会社がなくなるため、金融機関や取引先などに多大な迷惑をかけることになります。従業員に対しても給与や退職金を支払わないまま解雇することになります。また、経営者自身の老後の資金にも事欠くことになり、影響する範囲は大きくなります。
これを最小限にすることができるのが廃業の選択するメリットといえます。

廃業を選択する場合の注意点

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廃業を選択する場合に考えないといけない点を整理してみました。
まず、廃業には多大のコストがかかることを認識しておきましょう。

  • 負債の返済
  • 設備や不動産の処分
  • 在庫の処分
  • 従業員への対応
  • 廃業に必要な費用

それぞれ確認していきます。

負債の返済

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借入金や買掛金、支払手形などの負債について、廃業に伴い一括返済することになります。それだけの資金が会社にあるかどうかがポイントとなります。社長個人が会社に貸している資金も金融機関から借りているものであれば一括返済する必要があります。まずこの資金を捻出できるのかを最初に検討する必要があります。

 

設備や不動産の処分

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設備や不動産の処分についても費用がかかります。例えば、建物が社長個人のものでない場合は、建物を解体し更地にしたり、原状回復させたりする費用が発生します。設備や機械がある場合は最新の設備などで売却できる場合は良いのですが、できない場合は処分する費用が発生します。リース物件などがあれば返還や買取りを検討しますが、返還や買取りが難しい場合や、そもそも中途解約ができない契約になっておりその場合は損害金が発生する、という恐れもあります。

在庫の処分

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在庫が残っている場合が多いと思いますが、商品価値がありすぐ処分できる場合は問題ありませんが、廃業を選択せざるを得ないケースではそういうことは稀なのではないでしょうか。また廃業すると決めたあとではゆっくり処分する時間を取ることができない場合が多く、大半がたたき売りで処分することになります。

 

従業員への対応

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廃業をする場合は、従業員との雇用関係を解消します。従業員の生活への影響を最小限に抑えるため、従業員への対応が必要になります。まず、就業規則の規程がある場合は退職金の支払いが発生しますし、再就職に向けた支援として、廃業前に活動できる時間を与えたり、就職先を斡旋したりするなど、従業員の生活を守るための配慮が必要となります。これらの対応を怠ると、法的なトラブルに発展したり、経営者個人の悪評につながったりするリスクとなります。

 

廃業に必要な費用

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廃業に向けての費用は、解散の登記費用や官報広告料などの手続きで費用がかかります。また税理士や司法書士などの士業に依頼する場合は報酬として別途費用がかかります。手続に関して約10万円弱、士業の報酬料で十万円以上かかり、合わせると数十万円になります。

 

任意整理と自己破産

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廃業を選択する場合の注意点について確認しましたが、これらを検討した結果、難しいと判断した場合には、任意整理と自己破産という手段を選ぶことになります。

 

任意整理

専門家を活用する、もしくは、自ら主体となり、債権者と話し合い債務を整理していきます。

債権者が廃業する会社に協力的であるなど、ハードルが高い方法となりますので、専門家を活用することが妥当だと思います。専門家を活用したとしても、任意整理による処理では債権放棄額を損金できない可能性があるなど、債権者全員の同意を得ることは非常に厳しいのが現実です。もちろん専門家を活用すると費用は別途かかります。

自己破産

支払不能または債務超過の場合に行います。この状態では他の選択肢はなくなります。
手続としては、弁護士に依頼して裁判所に自己破産の申し立てを行います。この場合も裁判所に納める予納金と弁護士費用などの費用がかかります。負債総額と会社規模にもよりますが、75万円~300万円程度の費用が掛かるようです。

M&Aを検討する

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廃業を決める前に今一度、会社・事業を売却することを検討してみてはいかがでしょうか。

事業自体が黒字となっており、事業として魅力があるなどの条件をある程度満たしていれば、非常に有効な手段となります。M&Aは後継者不足の解決策として現在最も注目されており、手元に資金を残す選択肢でもあります。うまく買い手が見つかれば会社や事業の売却ができ、設備や不動産、在庫などの処分に悩まされることがなくなります。また従業員の雇用や生活を守れ、買手企業によっては、従業員の待遇面が向上することも期待できます。
M&Aを選択肢として検討するメリットは大きいのではないでしょうか。

まとめ

本日は廃業に関して確認してきましたが、廃業も簡単にできるわけではないことが確認できました。一定の条件があるものの、M&Aを選択肢として検討してみる必要は大いにあります。M&Aを選択肢として選べるように、まずは会社の磨き上げからしてみませんか?

さいきコンサルティングでは、伴走型で会社の磨き上げ、事業承継協会の賛助会員である船井総研への連携でM&Aへの対応も視野に入れたコンサルティングをしていきます。

広島における事業承継に関わるご相談は、お気軽にさいきコンサルティングまでお問い合わせください。

次回は、M&Aについて確認していきます。

それでは、また。

この記事を書いた人
佐伯 隆
中小企業診断士/事業承継士
ソニーの国内販売会社に38年間勤め、営業・マーケティング・マネジメントに携わる。量販本部担当を12年するほか、ソニーショップの経営支援などを行う。2021年より「さいきコンサルティング」を開業。

さいきコンサルティングでは、事業承継に関わるご提案および解決に向けて伴走型で支援をしていきますが、弁護士、税理士などの独占業務など、業法に抵触する職務をすることはありません。